薬剤師エッセイ

返品できない薬剤とFAX処方トラブルの現場から

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FAXで処方箋が送られてくる。このシステム自体は便利で効率的に思えますが、その裏には現場の薬剤師を悩ませる多くの課題が隠れています。「本当に患者様は来るのか?」「FAXの内容と原本が違う!」そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。

これらの課題は、薬剤師が患者様に安心・安全な医療を提供する上で、決して無視できない問題です。ミスや誤解が生じれば、患者様の健康に影響を与える可能性もあります。
本記事では、FAX処方にまつわる課題と解決策を具体的に取り上げ、同じ悩みを抱える薬剤師の方々と共感を共有し、解決へのヒントを提供します。


FAX処方にまつわる課題と改善策

本当に患者様が来るのか不安

問題点

病院やクリニックからFAXで処方箋が送られてきた場合、特に新患の患者様が来局するかどうか分からず、不安を感じることがあります。調剤を進めても、患者様が別の薬局に行く場合、無駄な作業と在庫管理の負担が発生します。

患者視点の影響

患者様が予定通りに薬局を訪れない場合、処方の調整が必要になり、別の薬局で薬を受け取る際にさらに時間がかかる可能性があります。

改善策

  • 病院側の対応
    患者様に「指定薬局へ必ず行く」よう案内を徹底してもらう。FAXを送った時点で、薬局へ直接連絡を入れる仕組みを導入する。
  • 薬局側の対応
    FAX到着後に患者様へ事前確認の電話を入れ、来局の意思を確認することで、無駄な調剤作業を減らす。

FAXと原本の内容が違うケース

問題点

FAXで届いた処方箋を基に調剤を進めた後、患者様が持参した原本の内容が異なることがあります。この場合、再調整が必要になり、患者様をお待たせすることになります。

患者視点の影響

処方内容の不一致による待ち時間の延長は、患者様にとってストレスとなり、特に体調が悪い場合には大きな負担となります。さらに、調剤ミスが発生すれば患者様の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

改善策

  • ルールの明確化
    処方内容に変更がある場合、FAX再送の前に必ず電話で薬局に連絡するルールを徹底する。
  • 電子処方箋の活用
    リアルタイムで処方内容を共有できる電子システムを導入し、FAXに頼らない仕組みを構築する。

誤FAXのトラブル

問題点

他の薬局宛ての処方箋FAXが誤送されるケースがあります。これにより、無駄な調剤が発生し、責任の所在が不明確になるなど、現場に混乱をもたらします。

患者視点の影響

誤FAXが原因で、希望薬局で薬が準備されておらず、患者様が予定していた時間内に薬を受け取れないケースが発生します。

改善策

  • 送信時の確認プロセス強化
    病院やクリニックにFAX番号のダブルチェックを義務付け、送信時のミスを防止する。
  • 誤送信時の対応フロー明確化
    誤FAXが発生した場合の対応フローを設定し、責任を病院側が負う仕組みを導入する。

高額な冷所保存薬のFAX処方で困った話

薬剤師として働く中で、高額な冷所保存薬の取り扱いには特に注意が必要です。一度納品されたら返品できない薬剤も多く、発注時には慎重な判断が求められます。


冷所保存薬に関する経験談

発注時の慎重さがリスク回避につながった例

ある日、冷所保存が必要な高額薬の処方箋がFAXで届きました。このような薬剤を発注する場合、私たちの薬局では、購入許可や価格比較に時間をかけます。その結果、発注の途中で病院から「処方をキャンセルしてください」との連絡を受け、返品不可リスクを回避できたことがありました。

誤FAXによる損失の発生

別の日、高額な冷所保存薬を発注し、患者様の来局を待っていましたが、患者様は現れませんでした。後に確認すると、FAXは誤送信だったことが判明。返品不可の薬剤だったため、薬局が損失を被る結果となりました。


冷所保存薬とFAX処方の課題解決策

  1. 患者様への事前確認
    高額薬剤の発注前に患者様に直接連絡を取り、来局の意思を確認する。
  2. 返品可能な契約の交渉
    高額薬剤や冷所保存薬については、返品可能な条件を含めた卸業者との契約を検討する。
  3. 発注時の再確認フロー強化
    発注前に病院へ直接確認を行い、誤送信や内容変更の可能性を排除する。

おわりに

薬剤師の仕事は、患者様の命と健康を支える重要な役割です。しかし、現場ではFAX処方や冷所保存薬の取り扱いにまつわる課題が多く、それらが医療の無駄や患者様の不利益を生む原因になることもあります。

こうした課題を解消するためには、現場の声をもとにしたシステムの改善が必要です。同時に、患者様や病院とのコミュニケーションを密にし、連携を強化していくことが重要です。このブログが同じ課題に悩む薬剤師の方々と共感を共有し、より良い医療の提供に向けた一歩となることを願っています。