薬剤師エッセイ

医薬品返品問題の真実:薬局と卸業者の見えない葛藤

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薬局業務の一環として欠かせないのが、医薬品の発注と在庫管理。
そしてその過程で生じる「返品対応」です。
特に最近では、返品対応に関するルールが複雑化し、薬局にとって頭を悩ませる問題となっています。
返品期限内で対応しているにもかかわらず、それ以外の理由で返品が断られるケースが増えているからです。

今回は、返品期限を守っているにもかかわらず、その他の条件で返品を拒否された際に感じた理不尽さについて掘り下げていきます。

事前に示される返品ルールとその遵守

複数の卸業者から、返品に関するルールが事前に共有されています。
例えば:

  • 返品は90日以内、または120日以内にお願いします。
  • 返品期限を過ぎた医薬品はお受けできません。

このような明確なルールがあるため、薬局側としても返品期限を遵守し、返品可能なタイミングで適切に手続きを進めています。
実際、私の薬局でも、発注や在庫管理をこのルールに基づいて運用しています。
しかし、それでも返品が断られる事態が発生するのです。

返品期限を守っても断られる「追加条件」とは

以下のようなケースで返品が断られた経験があります。

  1. 包装変更品は返品不可
    同じ医薬品であっても、新しい包装デザインや仕様変更が行われた場合、旧包装品の返品は受け付けられないと言われました。
    • 疑問点:包装変更の情報が事前に共有されていないことが多く、薬局側は返品不可の条件を知る術がありません。
  2. 新しい期限品が市場に出回っている場合は不可
    製造メーカーから新しいロットの薬品が供給され始めた場合、旧ロット品は返品対象外だと説明されました。
    • 疑問点:薬局側では市場でのロット変更のタイミングを把握することは難しく、予測不能な条件です。
  3. 短い期限品は返品期限内でも「即日対応」限定
    使用期限が短い品目については、返品期限内であっても、発覚した翌日までに返品依頼をしなければ受け付けられないというルールがあると返品時に言われました。
    • 疑問点:翌日対応を求められるケースでは、薬局業務の合間に迅速な手続きを強いられ、現場に負担がかかります。

薬局側の混乱と現場での葛藤

これは一部の卸業者に限られたことではありますが、返品期限内という条件を守って返品しているにもかかわらず、その他の「隠れた条件」で拒否されることには、薬局側として強い不満があります。
例えば、包装変更品や新しいロット品の登場など、薬局では事前に把握できない情報をもとに返品を断られる場合、以下のような問題が生じます。

  1. 返品条件の不透明さ
    「返品期限内であれば返品可能」と思っていた薬品が、実際には別の条件で拒否されると、薬局の在庫管理方針そのものが揺らぎます。
  2. 患者様への影響
    医薬品の在庫が返品できない場合、薬局としては店舗間で譲受出来ない場合は、その在庫を廃棄するか、在庫として保持するしかなくなります。
    このコストは最終的に患者様へのサービスに影響を及ぼしかねません。
  3. 発注業務のリスク増大
    返品条件が複雑化することで、薬局は在庫リスクを最小化するために慎重な発注を余儀なくされます。
    その結果、患者様に必要な医薬品を迅速に提供できなくなるケースも考えられます。

卸業者側の言い分:医薬品ロスを減らしたい思い

卸業者の担当者と話をすると、彼らが追加条件を設ける背景には、医薬品ロスを減らしたいという事情があるようです。
例えば:

  • 包装変更品や新しいロット品の返品を受け付けると、それが廃棄対象になる可能性が高いため、コストが増える。
  • 短い期限品は早期に対応しなければ再流通が難しいため、迅速な返品を求めている。

卸業者としては、薬局側からの返品をすべて受け付けることで発生するロスを防ぎたいという思いがあるのでしょう。

現場での対応策:薬局としての工夫

返品問題を少しでも緩和するため、私たちの薬局では次のような工夫を行っています。

  1. 患者様の受診日を考慮した発注
    処方が予想される患者様の受診日を見越して発注タイミングを調整。
    返品リスクを減らしています。
  2. 返品スケジュールの徹底管理
    返品可能な期限を管理システムで可視化し、締切が近い薬品を優先的に確認・対応しています。

返品条件の透明化を求める声

しかし、どれだけ薬局側で工夫をしても、情報の非対称性が解消されない限り根本的な解決にはなりません。
薬局としては、以下の点を改善してもらいたいと強く感じています。

  1. 返品条件の明確化
    返品期限だけでなく、包装変更やロット変更など、返品不可となる条件を事前に共有してほしい。
  2. 期限内返品の原則遵守
    包装変更や新ロット品の登場といった要因を除外し、返品期限内であればすべて受け付ける仕組みにしてほしい。
  3. 返品対応の効率化
    短い期限品に関する対応期間の柔軟化や、返品手続きのオンライン化など、現場の負担を軽減する工夫を期待しています。

薬局と卸業者が協力するために

返品条件の複雑化は、薬局と卸業者双方にとって負担となる問題です。
しかし、お互いの立場や事情を理解し、情報を共有しながら効率的な仕組みを構築することが、患者様にとって最善のサービスを提供するための鍵だと思います。