SGLT2阻害薬であるフォシーガ錠(ダパグリフロジン)やジャディアンス錠(エンパグリフロジン)は、糖尿病だけでなく心不全や腎臓病にも適応が拡大しています。
しかし、これらの薬剤に関連するハイリスク加算や特定薬剤管理指導加算の算定については、適応疾患や用量によって判断が分かれるため、現場での混乱が少なくありません。
本記事では、これらの加算に関するポイントを整理し、実務に活かせる情報をお届けします。
1. フォシーガ・ジャディアンスの基礎知識
適応疾患と用量
フォシーガ錠およびジャディアンス錠の適応疾患と初回用量を以下にまとめます。
薬剤名 | 2型糖尿病 | 慢性心不全・慢性腎臓病 |
---|---|---|
フォシーガ錠 | 5mg(初回) | 10mg(標準用量) |
ジャディアンス錠 | 10mg(初回・標準用量) | 10mg(標準用量) |
- フォシーガ錠10mgおよびジャディアンス錠10mgは、糖尿病が適応であればハイリスク加算が算定可能です。
- 心不全や腎臓病の適応で処方された場合は、標準用量であるためハイリスク加算は算定不可となります。
薬剤師としての確認ポイント
これらの薬剤の特徴を理解するだけでなく、算定可否が適応疾患に依存している点に注意することが求められます。
患者様の状態や処方目的をしっかり確認し、適切な加算を算定するためには、日常業務での細やかな観察と情報共有が重要です。
2. ハイリスク加算の算定要件
算定要件
- 初回投与であること
- モニタリングが必要な薬剤であること
- 重大な副作用リスクがあること
注意すべき副作用
SGLT2阻害薬全般に共通する副作用として以下が挙げられます。
- 低血糖(特にインスリンやSU剤併用時)
- 尿路感染症・性器感染症
- 脱水・ケトアシドーシス
これらのリスクから、糖尿病の適応ではモニタリングが必要と判断され、ハイリスク加算が算定可能になります。
一方、心不全や腎臓病の場合は適応疾患自体がリスク軽減につながると考えられ、算定不可となるケースが多いです。
課題:算定の煩雑さ
同じ薬剤であるにもかかわらず、糖尿病以外の適応ではハイリスク加算が算定できない点が現場の悩みです。
また、糖尿病適応であっても処方量によって算定判断が異なるため、患者様に聞き取りを行い、適応疾患を確認する手間が発生します。
3. 特定薬剤管理指導加算3(イ)の活用
フォシーガおよびジャディアンスでは、いずれもRMP資材(リスク最小化計画資材)が提供されているため、適応疾患を問わず特定薬剤管理指導加算3(イ:5点)が算定可能です。
算定漏れを防ぐポイント
- 処方時にRMP資材の提供を確認。
- 資材に基づく指導内容(副作用の兆候、緊急時対応など)を適切に記録。
これにより、特定薬剤管理指導加算の算定漏れを防げます。
また、患者指導の質を向上させるため、資材を活用した分かりやすい説明を心掛けることも重要です。
4. 実務での対応フロー
処方確認から加算算定までの流れ
- 処方箋確認
- 初回投与かどうかをチェック。
- 適応疾患(糖尿病か心不全・腎臓病か)を確認。
- 患者への確認
- 使用目的を聞き取り、糖尿病治療目的であればハイリスク加算を算定。
- RMP資材提供の確認と副作用リスクの説明を行う。
- 算定手続き
- 糖尿病適応:ハイリスク加算(5点)と特定薬剤管理指導加算(5点)の両方を算定。
- 心不全・腎臓病適応:特定薬剤管理指導加算(5点)のみ算定。
5. 現場の課題と解決策
課題
- 算定の可否が複雑:
糖尿病以外の適応ではハイリスク加算が算定できないため、適応疾患の確認が必要。 - 患者への聞き取りの手間:
処方量や適応疾患によって対応が変わるため、患者様に何のために処方されたかを確認する場面が多い。
解決策
- フロー整備:
- 処方箋確認、患者聞き取り、算定判断を明文化した対応フローを作成。
- カルテ記載の充実:
- 医師に適応疾患や投与目的を明記してもらうよう依頼し、曖昧さを排除。
- 院内教育の実施:
- 算定基準や注意点を共有し、スタッフ間の認識を統一。
6. 実際にあった算定の注意点
事例1:フォシーガ10mgを心不全適応で処方
適応が心不全である場合、フォシーガ10mgは標準用量となるためハイリスク加算は算定不可。ただし、特定薬剤管理指導加算は算定可能。処方目的を確認することでミスを防止。
事例2:ジャディアンス10mgを糖尿病適応で処方
糖尿病が適応の場合は、ハイリスク加算を算定可能。特定薬剤管理指導加算も併せて算定し、患者には感染症や脱水リスクをしっかり説明。
7. まとめ
フォシーガやジャディアンスは、糖尿病だけでなく心不全や腎臓病にも効果を発揮する薬剤ですが、ハイリスク加算の算定は糖尿病適応時に限られるため、適応疾患の確認が非常に重要です。
また、特定薬剤管理指導加算3(イ)はどちらの薬剤でも算定可能であり、RMP資材提供を漏れなく確認することがポイントです。
算定漏れを防ぐための対応フローや患者聞き取りの徹底、院内での情報共有を通じて、現場での課題を解決していきましょう。